「7つのヒマワリ」セレモニーと除幕式
大塚国際美術館(大塚一郎館長、徳島県鳴門市)は、2018年3月21日に開館20周年を迎え、その記念事業として、ゴッホが描いた花瓶の「ヒマワリ」全7点を陶板で原寸大に再現し、新たに設けた展示室で一般公開しています。
公開前日の3月20日(火)に、ご協力いただいた「ヒマワリ」所蔵館など国内外の関係者にご出席いただき、セレモニーと除幕式を開催しました。
■除幕式の様子(左から)
福島さとみ様(武者小路実篤記念館 事務局長代理)
中島隆太様(東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 館長)
フェリス・フィッシャー様(フィラデルフィア美術館 上席学芸員[東洋美術])
クリスティアン・ゲルティンガー様(ドイツ連邦共和国バイエルン州駐日代表部 代表)
ジュリー・モロイ様(ロンドンナショナルギャラリーカンパニー 社長)
リカルド・ヴァン・ダム 様(ヴァン・ゴッホミュージアム エンタープライゼス 社長)
マーティン・ベイリー 様(ヴァン・ゴッホ スペシャリスト)
矢吹華子 様(幻の「ヒマワリ」を購入した山本顧弥太氏 御曾孫)
千足伸行(大塚国際美術館 絵画学術委員[近代]、成城大学名誉教授 ※今回の展示監修)
大塚一郎(大塚国際美術館 館長)
■大塚国際美術館 館長 大塚一郎 より
このたび大塚国際美術館開館20周年記念事業として、ゴッホが描いた花瓶の「ヒマワリ」全7点を陶板で原寸大に再現し、新たに設けた展示室で常設展示する運びとなりました。
当館では、開館当初からゴッホ美術館所蔵の「ヒマワリ」を展示し、2014年10月には、阪神大空襲の折に焼失した、兵庫県芦屋市にありました幻の「ヒマワリ」を再現し、追加展示しました。この追加展示を機に、「ヒマワリ」全7点を一挙に展示することが、当館の新たな夢、目標となり、開館20周年記念事業に向け、さらに5点追加展示するプロジェクトに挑戦してまいりました。
今回の展示は世界でも例がない画期的な試みであり、千年、2千年と悠久の時の流れにも劣化せず、色褪せない陶板での再現は、これからの文化財の記録保存と活用のあり方に寄与するものと考えています。
■監修 千足伸行 様
(大塚国際美術館 絵画学術委員[近代]、成城大学名誉教授)※今回の展示監修
「ヒマワリ」という作品は、ゴッホにとっても特別な作品で、彼の手紙によると「自分が描いたヒマワリでアルルのアトリエを飾りたい。そして盟友ゴーギャンを迎えたい」と夢を抱いていました。
しかし残念ながら「ヒマワリ」をひとつにまとめたヒマワリの部屋や美術館をつくるという夢を果たせないまま、彼は命を絶ってしまいました。
それから1世紀以上を経た、この日本でゴッホの夢が実現しました。日本が大好きなゴッホでしたから、もし彼が生きていたならば、今日の日を誰よりも喜んだように思います。
7枚の「ヒマワリ」に描かれた花の数は作品によって若干数が違いますが、仮に1作品15輪とすると5点で75輪のヒマワリ、芦屋にあった幻の「ヒマワリ」、個人蔵の作品を加えると、80輪を超えるヒマワリが一堂に会して絢爛と咲き誇るということになり、我々としても大変喜ばしいことです。
■ヴァン・ゴッホミュージアム エンタープライゼス 社長 リカルド・ヴァン・ダム 様
ゴッホの「ヒマワリ」をひとつの部屋で展示するかつてない試みは、美術愛好家にとって最高峰の経験です。世界中に散在する繊細で貴重な「ヒマワリ」の作品は、どの美術館もあえて貸出しようとはしません。そういった現状のなか、一堂に7つの「ヒマワリ」を展示することは、一世紀以上、誰も実現できませんでしたから、このユニークな展示を実現した大塚国際美術館は特別だといえます。
ご存じのとおり、ゴッホは日本と日本の芸術に興味を持ち、浮世絵を収集していました。彼は浮世絵の構図、豊かな色づかい、主題、そして自然への細やかな視点に特に魅了されました。そして私たちゴッホ美術館も、ゴッホと同じように長年に渡って日本と深い関係を築いています。
徳島にいらっしゃった皆さまがこの新展示「7つのヒマワリ」を楽しんでいただけることを願い、20周年をお祝いしたいと思います。
■ヴァン・ゴッホ スペシャリスト マーティン・ベイリー 様
ゴッホはアルル「黄色い家」のゴーギャンの部屋を飾るために「ヒマワリ」シリーズを制作しました。 3本のヒマワリを花瓶に入れ、その後は6輪、さらに14輪、15輪と、驚くことに彼は1週間とかからず 4枚の「ヒマワリ」を完成させました。
私の著書「The Sunflowers are Mine」を執筆する際、1世紀前に日本に「ヒマワリ」があったことを知りました。それは芦屋の実業家 山本顧弥太氏が購入しましたが、1945年の戦禍で焼失した「ヒマワリ」でした。武者小路実篤記念館の画集で見た「ヒマワリ」がオレンジ色の枠で囲まれていたことに驚き、すぐにゴッホの手紙を見てオレンジの木枠で絵を飾るつもりであったことを発見しました。この「ヒマワリ」はここ、大塚国際美術館で見られます。さらにその後、ゴッホは「ヒマワリ」を3作描き、そのうちのひとつは東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館にあります。
7つの「ヒマワリ」の内、1枚は失われ、他のものはヨーロッパ、アメリカ、日本に散在しており、一堂に見ることは困難です。このギャラリーに一歩入ると「ヒマワリ」に囲まれます。ここを訪れる人々がまるで「黄色い家」の中にいることを想像していただけたら幸いです。