フェルメールの傑作「合奏」を陶板で原寸大に再現し、3月18日から常設展示します。本作は、1990年3月18日にアメリカ・ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館で起こった“美術史上最大の未解決盗難事件”で消失した13点のうち1点。同館は今なお、美術品の安全な返還につながる手掛かりを探しており、多くの関心を集めています。
事件から35年を迎える2025年3月18日、いまだ行方不明である名画の追加展示にぜひご期待ください。
フェルメール「合奏」
1663-66年頃 72.5 × 64.7cm
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館 ボストン
©Isabella Stewart Gardner Museum,Boston
地下2階 エレべーター1、2付近
和やかに奏楽するワンシーンをひそかに垣間見たかのような、フェルメールが好んだ情景。男性がリュートを弾き、女性がチェンバロを演奏する中、もう一人の女性が楽譜を持ちながら拍子を取り、歌っています。演奏をテーマとした作品の中でもとりわけ自然で、親密な雰囲気のある室内画です。17世紀オランダにおいて、音楽は文化と密接な関係にあり、当時の画家たちは愛を表現するために楽器や音楽を用いました。フェルメールにとっても、音楽のある情景は身近なものであったことがうかがえます。
美術史上最大の未解決盗難事件 被害総額は数億ドル |
1990年3月18日深夜、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館に警官を装った2人組の強盗が侵入し、フェルメール「合奏」、レンブラントやドガの作品など計13点を盗み出した。本事件は現在もFBIや美術専門家による調査が続けられており、1000万ドル(約15億5600万円(注1))の懸賞金が掛けられている。 |
(注1) 2025年1月28日時点の為替レートによる金額
Isabella Stewart Gardner Museum(イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館)
アメリカ・ボストンにある、ヴェネツィア宮殿風の建物と美しい回廊に囲まれた中庭が特徴の美術館。元は創設者であるイザベラ・スチュワート・ガードナー夫人の私邸だった。ヨーロッパ、アジア、アメリカなどから集めた絵画、彫刻、装飾品など、さまざまなコレクションが所蔵されている。
フェルメールの「合奏」は、イザベラ・スチュワート・ガードナー夫人が1891年にパリのオークションにて6000ドルで購入し、美術館2階のオランダ室に展示されていた。「どの作品も動かしたり置き換えたりしてはならない」というガードナー夫人の遺言が尊重されると同時に、作品の帰還を願う希望の象徴として、現在も盗まれた絵が飾られていた場所には空の額縁がそのまま展示されている。
Netflix ドキュメンタリーシリーズ 「ガードナー美術館盗難事件-消えた5億ドルの至宝-」 |
盗難事件の真相に迫るドキュメンタリー、「ガードナー美術館盗難事件-消えた5億ドルの至宝-」(全4話)がNetflixにて2021年より独占配信中。
美術史上最大級のミステリーとしてさらなる注目を集めた。
Netflix ドキュメンタリーシリーズ
「ガードナー美術館盗難事件-消えた5億ドルの至宝-」
1990年、警官を装う2人の男がボストンの美術館に侵入し、総額数億ドルに値する美術品13点を盗み出した。この大胆不敵な強盗事件の真相を追う。
https://www.netflix.com/jp/title/81032570
ヤン・フェルメール
1632年オランダ デルフト生まれ。21歳のときから画家としての活動を始め、デルフト画家組合の理事も務める。手紙、音楽、恋愛などを題材とする室内の日常生活を描き、緻密な筆遣いや計算された光の表現、幾重にも解釈できる画中画など、鑑賞者を魅了する美しく繊細な作品を残した。1675年43歳で没するとその作品は次第に忘れ去られてしまったが、19世紀になって改めて評価されるようになった。