過去のおすすめ

 

過去のおすすめ一覧

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【今月の一枚】ゴヤ、フランシスコ・デ「日傘」
夏本番ですね。最近は男性向けの日傘もよく見かけるようになってきました。
そこで今月はゴヤの描いた「日傘」をご紹介します。

作品からは優しそうなお供の男がスペインの強い日差しからを女性を守ってあげる様子が伺えます。
では女性のほうは何をしているのでしょうか。服装の色の対比が鮮やかでそちらが目立ちますが、目線も少し気になりませんか。
何だか鑑賞者に微笑みかけているように見えます。

では、そもそもこの作品が描かれている時に、彼女の前には何があったのでしょう。
そう、そこには筆を走らせているゴヤがいます。

この頃は、ロココと呼ばれる、優美で時に色恋の話を秘めた作品が多く描かれた時代です。
どういう思いで彼女はゴヤを見つめているのかと、少し時代背景も合わせて想像するだけで、作品の捉え方も変わってきます。

涼しい館内で、登場人物の心理やセリフを考えながら過ごす夏の一日はいかがですか。
 
(文責:学芸部 武知直輝 2012年8月)
 
【今月の一枚】スーラ、ジョルジュ「アニエールの水浴」
7月になりました。だんだん蒸し暑くなってくると、海水浴やプールに行くのが楽しみという方も多いのではないでしょうか。

今月の一枚は、新印象主義の画家スーラの「アニエールの水浴」です。よく晴れた暑い夏の午後、穏やかな水辺で人々が水浴びをしたり、寝そべってくつろいでいます。気持ち良さそうですね。
アニエールはパリの郊外にあり、ボート遊びの場として知られていました。向こうに工場の煙突や鉄道線路などがもやの中にかすんで見えています。

この作品は、パリ郊外のセーヌ河畔というテーマ、人物を画面の端で切り取る(右端のボートを漕ぐ人)など、一見すると印象派風に見えます。しかし、印象派の画家達が現場で制作し、一瞬の光の効果をとらえるために急いで描いたのに対し、スーラは最初のスケッチのみ戸外で制作し、その後はアトリエでじっくり考えながら構図を組み立てるという伝統的な制作方法をとりました。
水面、水に映る緑、鉄橋などの水平線、ヨットの帆や煙突の垂直線が、絵画に整然とした印象を与えています。スーラは線のもつ意味について早くから研究をしていました。上昇する線は陽気さ、水平線は静寂や休息といったように。この作品でも水平線を繰り返すことで静けさや穏やかさが表わされています。水遊びにはしゃぐ人々の声や水しぶきが聞こえてきそうなのに、とても静かな情景に見えるのは、構図のせいかもしれません。

赤い帽子の少年がただ一人、この静かな画面に動きを与えています。両手を丸めて口にあて「おーい」と呼びかけるその先に浮かんでいるのは、グランド・ジャット島です。スーラはこの作品に続く2作目で、大画面の傑作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を描きました。大塚国際美術館では、2つの作品が隣合わせで展示されています。まるで、少年が本当に隣の絵の中の人々に呼びかけているみたいです。スーラは、「グランド・ジャット島の日曜日の午後」では補色関係にある純色の点を混ざり合わないように塗り、一定の距離を置いて見ると色彩がより明るく輝いて見える「点描画法」で一躍有名になりました。「アニエールの水浴」では印象派風のタッチは見られますが、まだ点描画法は完成されていません。でも、少年の赤い帽子についている青色の点にきざしが見えますね。

今年の夏は、鳴門の美しい海で泳いだ後、暑さ厳しい昼下がりは大塚国際美術館で名画をながめて心静かなひとときを過ごすというのはいかがでしょう。スーラの絵画のような夏休みの過ごし方、おすすめいたします。 
 
(文責:学芸部 田中智子 2012年7月)
 
【今月の1枚】ゴッホ、フィンセント・ファン「ヒマワリ」
ゴッホの「ヒマワリ」は、11点現存しています。
当館はオランダ・アムステルダムのゴッホ美術館の絵画を陶板で再現をしています。
本作は、ゴッホが敬愛していた画家ゴーギャンのためにゴッホ自身が現在、ロンドンのナショナルギャラリーにある絵画を模して描いたといわれています。敬愛していたゴーギャンが絶賛してくれた「ヒマワリ」は、二人の関係の証だったのかもしれません。

太陽の象徴として、ゴッホが描き続けた「ヒマワリ」は、もともと12点ありました。
しかし、そのうちの1点は、残念ながら焼失してしまったのです。 その事実を知らない日本人の方は多いですが、実は、ここ日本で焼失してしまったのです。 武者小路実篤率いる白樺派が1917年に購入していたゴッホの「ヒマワリ」は第二次世界大戦中の1945年8月6日兵庫県の芦屋で空爆によって、この世界から永遠に消えてしまいました。

画家になると決意した27歳から自殺する37歳までの10年間がゴッホの画家としての人生です。たったの10年しか画家として生きていないのに、彼の一途な思いのこもった絵画は歳月を超えて、私たちを魅了し続けています。

当館の2ヶ月ごとにテーマが変わる期間限定の「週末ギャラリートーク」、6・7月は「花紀行」フィレンツェ~パリです。ゴッホの「ヒマワリ」のように絵画に登場するさまざまな「花」のお話をさせていただきますので、是非、ご参加ください。
 
(文責:学芸部 安東七瀬 2012年6月)
 
【今月の1枚】「パリスの審判」
「美しくありたい」。それは女性にとって永遠の願いといえるでしょう。さらには「出来れば他の人よりも美しくありたい」、そう願う女性も多いはずです。

今回ご紹介するのは、三人の女神が自分たちの美しさを競い、1人の男性に「誰が一番美しいか選びなさい。私を選べば褒美を与えましょう。」とそれぞれが魅力的な褒美を提示したというギリシア神話をモザイクで表現した作品です。

登場する三人の女神は結婚の神ヘラ、戦いの神アテナ、美の女神アフロディテ。アフロディテはローマ神話ではヴィーナスと呼ばれています。
それぞれが用意した褒美とは、ヘラがアジアの王権、アテナは戦いの勝利、アフロディテは世界一の美女を与えるというものでした。
そして、その重大な審判を任されたのが、左側で座るトロイアの王子パリス。三人の女神をパリスの元へ導く役割を担っていたのは、左足を岩の上に置いている伝令の神ヘルメスです。
 
さて、パリスは誰を選んだのでしょうか?どれも魅力的な報酬です。おそらく彼はとても迷ったことでしょう。そして決断しました。彼が選んだのはアフロディテ。そう、世界一の美女を手に入れることを選んだのです。
パリスが手に入れた世界一の美女、それはスパルタの王妃ヘレネでした。彼女はすでに結婚をしていました。ヘレネがパリスに奪われてしまったことを夫であるスパルタの王が黙って放っておく訳がありません。一度はヘレネを渡すよう求めましたが、パリスはこれを拒否します。そのために、あの「トロイア戦争」が起こったのです。
「美しさ」。それは女性にとって、永遠に自身に持ち続けたいものであり、男性を惑わせる大きな武器となるもののようです。

余談ですが、伝令の神ヘルメスの母親はマイアという名前、実は5月の「May」の由来となった女神という説を持っています。
 
(文責:学芸部 内藤寿美子 2012年5月)
 
【今月の1枚】ヴェロッキオとレオナルド・ダ・ヴィンチ「キリストの洗礼」
ヴェロッキオ工房で修行中の20歳頃のレオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてその師匠であるヴェロッキオが描いた作品。
フィレンツェのサン・サルヴィ修道院より依頼を受けて、描いた祭壇画である。キリストがヨルダン川で洗礼者ヨハネから洗礼を受けるという新約聖書の福音書に記載されている場面である。

人物、おおよその背景を主に親方のヴェロッキオが描いている。レオナルドが担当したのは、一番左側の天使と背景の一部とされている。
このようにレオナルドは制作協力した形で描いており、残存するレオナルドの作品の中では最古のもの。

ここで注目していただきたいのが、レオナルドが描いた一番左側の天使である。例えば、ヴェロッキオが描いたキリストの部分に注目すると、解剖学的には正確に描かれているが、華やかさが欠けている。
しかし、レオナルドが描いた左端の天使はどうだろう。この洗礼の奇跡を放心状態で眺めている表情、繊細な金髪の表現、衣服の影の表現などヴェロッキオと比べるとはるかに凌駕する技量が見て取れる。
それを目の当たりにした師匠、あふれんばかりの才能を持つ弟子に圧倒され、この作品以降、筆をとることをやめたと言われている。

ヴェロッキオにとっては、自分の絵画人生に終止符を打つきっかけとなった作品、しかしレオナルドにとっては、これから自分の才能を開花させ、絵画人生の出発点となった作品とも言える。
 
(文責:学芸部 川﨑泰寛 2012年4月)
 
「最後の晩餐」
修復前後の展示の意義 -20年を費やして出会った、レオナルド・ダ・ヴィンチ オリジナルの筆跡-
 

「最後の晩餐」(1495~98頃)は巨匠レオナルドの代表作というばかりではなく、ルネサンス古典様式を代表する西洋美術史上の最高傑作と云われています。

 

しかし、この壁画の運命は極めて悲惨なものでした。

 

1970年代までは、その芸術的価値もよくわからないほど画面は暗く形もはっきりしませんでした。ところどころにレオナルドらしくないタッチがあったりもしました。 その損傷の理由は、レオナルドが漆喰の壁にはふさわしくないテンペラ(顔料に亜麻仁油と卵 を混ぜたもの)で描いたこと、教会の食堂の壁に描かれたために湿気をたえず吸収してしまったこと、1943年に連合軍の空爆によって建物が破壊されて構造 体が大打撃を受けたことなどです。そのうえ、18世紀以降、繰り返し描き直しや描き加えが行われてきました。

 
 
20年もの年月を費やした、 科学的な解明・修復への取り組み。
1977年に、ミラーノの文化財保存監督局が女性の修復士ピニン・ブランビッラさんに依頼して、科学的検査をもとに、画面に堆積した塵や加筆を細い筆で 取り除いてゆくという綿密細心な気の遠くなるような修復作業が開始され、それが20年も続きました。
 
汚れや加筆が取り除かれた結果、わたしたちははじめて レオナルドが描いたオリジナルの傑作に出会うことが出来たのです。その結果、いま私たちは心から、この絵が、描かれた直後から歴史に残る傑作といわれたのはなぜかを実感することができます。
 
このたび、大塚国際美術館が修復された画面を修復前の画面と並べて展示するということは、20世紀がようやく修復という科学によって真のレオナルドを復 活させたということを示し、わたしたちにオリジナルの「最後の晩餐」の価値をはっきり知らせてくれることになるのです。
 
千葉大学名誉教授
川村学園女子大学教授
大塚国際美術館 絵画選定委員
若桑みどり
 
エル・グレコの大祭壇衝立画復元
かつてスペインのドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院にはエル・グレコ(1541-1614)の円熟期、 1600年前後の制作になる大祭壇衝立画がありました。残念ながらこの作品は19世紀初頭、ナポレオン戦争で破壊され散逸し、幻の祭壇画となりました。当美術館ではスペイン美術史家、故・神吉敬三教授の説に従って、スペインのプラド美術館にあるエル・グレコの5点の作品「キリストの復活」(左上)、「キリストの磔刑(たっけい)」(中央上)、「受胎告知」(中央下)、「聖霊降臨」(右上)、「キリストの洗礼」(右下)にルーマニア国立美術館の1点「羊飼いの礼拝」(左下)を加えた6点で、この大祭壇衝立画を原寸大で推定復元しました。世界初の試みです。
<<大塚国際美術館>> 〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1 TEL:088-687-3737 FAX:088-687-1117