過去のおすすめ

 

過去のおすすめ一覧

過去のおすすめ一覧
フォーム
 
【今月の1枚】「貝殻のヴィーナス」
エメラルドグリーンの海で、愛と美の女神であるヴィーナスが漂う姿はとても優雅です。
貝殻に横たわるヴィーナスは、右手に団扇を持ち、ヒマティオンと呼ばれる布端を両手で持って風を受けています。ヴィーナスの両端には、キューピッドが銛を手にしてイルカに乗っています。

この作品はイタリアのポンペイから出土したものです。ポンペイは、79年のナポリ・ベスビオス火山の噴火によって長い年月、地中に眠っていた街です。
そして、1748年から本格的な発掘の始まり、古代ローマの街・ポンペイがこの世界に再び目を覚ましたのです。それは、古代ローマの状態をそのまま現在に伝える非常に意義深い遺跡のひとつです。

西洋絵画で貝殻とヴィーナスといえば、ボッティチェッリの描いた「ヴィーナス誕生」を想起される方が多いと思います。ただ、1400年代を生きたボッティチェッリは、18世紀に出土した、このポンペイの「貝殻のヴィーナス」を見ることはできませんでした。
愛と美の女神・ヴィーナスは海から生まれるという神話の為に、このような構図が古代から描かれてきたこともよくわかりますね。

今年の夏休み子供プログラムは、名画で体験イタリアめぐり~古代ローマ編~を開催します。
7月21日(日)~8月31日(土) 体験コーナーでは、古代ローマ人の衣装を着ることができたり、古代ローマの遊びに挑戦できたりと楽しい体験ができます!
是非、ご参加くださいね。
 
(文責:学芸部 安東 七瀬 2013年6月)
 
【今月の1枚】モネ、クロード 「日傘の女」
日傘を差す女性をモネは何枚か描いており、ほぼ同じポーズの女性を右向きでも描いています。

晴れた空の下、白いドレスに日傘を差し草原に立つ女性。
日傘は当時流行していたおしゃれアイテムです。
白いドレスに鮮やかに映えているのが、腰に付けた赤いコサージュ。
フランスの野に咲く春の花といえばヒナゲシでしょうか。

風景はモネらしい素早いタッチで描き込まれています。
その空や草原に溶け込むように描かれながら、見上げるような構図でしっかりと立っていることを感じさせる人物。
後ろから追い風を受けていることがスカーフの動きからも感じられます。

モネの生きた時代はちょうど女性がおしゃれをして、外出を始めた時代でした。
顔もはっきり描かれていないこの絵のモデルは、そんな当時の女性を象徴しているかのようです。

一見穏やかな風景ですが、この作品に込めたモネの意気込みが当時の知人に語られています。

「私はいつものように懸命に仕事をしています。しかしそれは何か新しいもの、つまり風景のように扱われた戸外の人物です。それはいつも私を悩ませてきた私の夢です。
私は今度こそそれをやりとげたいのです。」

当時のモネが新に挑戦していた風景の中の人物。
画面を吹く爽やかな風と共にモネの熱い思いが伝わってくるような作品です。
 
(文責:学芸部 森 輝実 2013年5月)
 
【今月の1枚】 ラファエッロ「小椅子の聖母」
聖母子の画家 ラファエッロ。

画面いっぱいに黄色の衣装をまとった大きなイエスの体が描かれ、マリアは身をかがめてようやく円形の枠の中におさまっています。
マリアの体はそのために斜めに画面を横切り、椅子の背もたれもこれとバランスをとって傾いています。

聖母は頭にターバンを巻き、ショールで肩を包むという当時の流行のスタイルです。
母と子はいかにも親しげで、しかも双方とも好ましくかわいらしいので、19世紀まで世界で最も人気のある聖母子像でした。

このような円形画はトンドと呼ばれ、 "円形の"を意味するイタリア語です。
彼が活躍したルネサンス期イタリアで愛好され、祭壇用の縦長形式とは違って、親しみのある個人の礼拝用として作られました。

ラファエッロは1483年4月6日にイタリア ウルビーノで生まれ、宮廷に出入りする画家であった
父の手ほどき受けて育ちました。
ヴァティカン宮殿のフレスコ画を描くなど多くの名作を残しましたが、37歳という若さでその短い生涯を終えました。

2013年はルネサンス三大巨匠のラファエッロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロの展覧会が開催される注目の年です。
当館ではラファエッロの作品を10点展示しています。
この春、そのやさしさにふれてみてはいかがでしょうか。
 
(文責:学芸部 土橋 加奈子 2013年4月)
 
【今月の1枚】 「春」
今からはるか2000年前、豊かな生活を謳歌した古代ローマの人々。
今月は、時を越えてなお魅力あふれる古代ローマの、春を感じる一枚を紹介しましょう。

鮮やかな緑を背景に、花を摘む若い女性が描かれた絵画《春》。
この女性は、プリマヴェーラ(春の擬人神)ともいわれています。

女性は滑り落ちたマントを左腕にまとめ、麻で編んだキトンと呼ばれる衣服から白い背中を見せて遠ざかってゆきます。
このキトン、もとは古代ギリシアの人々が着用した衣服です。
ローマ人がどうして古代ギリシアの衣服を・・・?

なぜなら、洗練されたギリシア美術の傑作を目にしたローマ人たちが、その美しさに魅了されたからです。
異文明のギリシアに敬意と憧れを強く抱いた彼らは、"ギリシア風にありたい"と願いました。

本作でもギリシア絵画を手本としたのでしょうか。
キトンをひるがえし、花を摘みとろうとする優美な一瞬が見事にとらえられています。

彼女の顔は描かれていませんが、きれいにまとめられたブロンドの髪、細いうなじ、わずかにこちらを向いた横顔から、その美しさが想像できます。
どこか浮世絵の見返り美人図を思わせるような、ローマ人たちの豊かな感性が伝わってきますね。

現代人の目からみても芸術的な豊かさあふれる古代ローマの春を、ぜひ大塚国際美術館で感じてみてください。
 
(文責:学芸部 坂本 明子 2013年3月)
 
【今月の1枚】ルソー、アンリ「蛇使い」
ひと目見ると忘れられないインパクトある作品を描く画家、アンリ・ルソー。
彼はフランスから外に出ることはめったになく、生涯一度も熱帯の地域を訪れることはなかったそうです。
実際には、パリの植物園に足しげく通い、そこで見たものに自由な創造力を加えて描いたとされる作品は人工的な雰囲気が漂い、人物や植物の大きさがアンバランスに表現されていて、ルソー独自の世界感が広がっています。

月の輝く夜、うっそうとした木々に囲まれた静かなこの空間で、蛇使いの女が吹く笛の音色が、じんわりと暖かい空気を伝って聞こえてくるようです。
鳥や蛇などの生きものたちは図鑑に掲載された写真を見て描き込んだとも言われています。

訪れたことのない国に思いを馳せて描いた風景。ルソーにとっての魅力とはどういったところなのでしょうか?

画面全体の大半を占めるさまざまな木々や草などの緑色は22種類も使われているそうです。この絵の前で、その微妙な色合いの緑をじっくりとご覧ください。
 
(文責:学芸部 大林 加奈 2013年2月)
 
【今月の1枚】シャルダン、ジャン=バティスト・シメオン「独楽遊びをする少年」
日本の伝統的なお正月の遊び、独楽(こま)回し。
なんと、西洋名画の中にもこまを回して遊ぶ子どもの姿が描かれたものがあります。

モデルは銀行家で宝石商でもあった画家の友人、シャルル・ゴドフロワの息子オーギュスト・ガブリエル、当時10歳。
少年が回るこまへ一心にまなざしを向け、楽しんでいる様子には思わず笑みがこぼれます。詩的な静けさの中に、こまだけが回り動いているのが際立ちます。

シャルダンは、歴史画や肖像画に比べて、当時、評価の低かった風俗画や静物画というジャンルの画家でしたが、その詩情あふれる作品が好評を博し、王侯貴族の収集家からも注目されました。
この絵も、肖像画というより子どもの遊びを題材にした風俗画となっており、そのため、堅苦しさから放たれ、打ち解けた自然な表現となっています。彼は子どもの優れた描き手でもありました。

実はこの絵は版画になり、大衆にも普及したようです。 「気まぐれの神に身をゆだねる者は神の手の中で永遠にこまのように回り続ける・・・」という道徳的な詩が付けられ、むちで打っている間しか回らないこまは、人間の怠惰や変転する運命を暗示し、机の上の書物やペンは学習や勤勉を象徴するということで、愛らしい絵の中にも教訓的な意味が込められています。

大塚国際美術館では、代表作「赤エイ」「食前の祈り」などを含むシャルダンの作品6点をご覧いただけます。
 
(文責:学芸部 富澤 京子 2013年1月)
 
【今月の1枚】レオナルド・ダ・ヴィンチ「洗礼者ヨハネ」
フランスの国王フランソワ1世の招きによりローマを去り、フランスに向かったレオナルドが最晩年に描き、「モナ・リザ」、「聖アンナと聖母子」とともに生涯自らの手元に残したとされる作品。

洗礼者ヨハネは、ヨルダン川でイエス・キリストに洗礼を行った人物とされ、イエスの弟子である12使徒の1人のヨハネとは別の人物である。この洗礼者ヨハネは、毛皮の服と十字の杖が描かれており、右手の人差し指を天に向けているが、これは天からの救世主イエスの到来を予告している。

この人物のモデルははっきりと分かっていないが、いつもそばにいたレオナルドの弟子である美男子のサライではないかと言われている。この説が有力であるが、レオナルド自身も若い頃は、モデルをつとめるほど美しかったこともあり、自分自身をモデルにしていた可能性もある。

このような中性的な容姿に浮かぶ微笑み。この微笑みは、何を表わしているのか。「モナ・リザ」同様、謎に包まれている作品である。
 
(文責:学芸部 川﨑 泰寛 2012年12月)
 
【今月の1枚】モネ、クロード「ラ・ジャポネーズ」
日本のうちわに囲まれ、金銀の刺繍をあしらった豪華な赤い着物をまとった女性がにっこりと笑っている。
嬉しそうに見返りながら、"見栄"を切っているようだ。
モデルは、作者モネの妻カミーユ夫人。彼女はブロンドのかつらを被った姿で描かれている。
輝く金糸と髪色が映えてより一層華麗な様子だ。

壁にかけられたうちわには、柳や鶴、水辺の小舟など日本らしいモチーフが散りばめられている。
よく見ると、うちわの中の花魁らしき女性が、驚いたようにブロンド娘を振りかえっているように見えたり、「海老で鯛を釣る」のうちわがあったりと、ユーモアたっぷりの作品だ。

こんなにも日本の物に囲まれているにも関わらず、よく見るとカミーユ夫人が手にする扇は赤白青のトリコロール柄。
モネが生きた国、フランス国旗の色だ。

モネは、浮世絵を熱心にコレクションし、フランスのジヴェルニーにある邸宅に日本庭園を築くほど、日本趣味に魅了された画家だった。
しかし、残念ながら一度も日本を訪れたことはなかった。

今では、モネの大好きな日本趣味を詰め込んだ作品を、日本の徳島でも見ることができる。
当館に訪れた際にはぜひモネの作品の中から日本を見つけてみて欲しい。
 
(文責:学芸部 荒田千鶴 2012年11月)
 
【今月の1枚】エル・グレコ「聖マウリティウスの殉教」
スペイン、マドリードから北東に約40kmのエル・エスコ リアル美術館(宮殿)。
1563年フェリペ2世によって、当初 スペイン王家の墓廟だったものに修道院と宮殿が併設された。
この宮殿の中に今月の一枚がある。それは、しいたげられた状況下で展示されているように思えた。1580年フェリペ2世はこのエル・エスコリアル宮殿の祭壇を飾る《聖マウリティウスの殉教》物語をギリシア人画家 エル・グレコ に依頼した。祭壇画として、たて448cm×よこ301cmの大きさ、並びに、良質の絵具を使用するように(特にブルーはラピスラズリーを使うようにと・・・。)依頼されて2年後、エル・グレコ は自信満々の作品を国王フェリペ2世の前に差し出す。しかし・・・。

国王フェリペ2世が楽しみに待ちに待ったこの作品に対して『祈る気をそぐ!』 の冷たい一言。依頼主としては、作品の左下に小さく描かれた殉教者たちを大きく中央部分に描くことを期待していた。カトリック教擁護者としてのフェリペ2世とギリシア人画家エル・グレコとの行き違い・・・か。

今でも、現地エル・エスコ リアル宮殿において、この作品は地べたに立て掛けられている。宮廷画家を夢みて、なし得なかった彼の数ある宗教画傑作の1つ。
当館で祭壇画の大きさ そして、国王が特に依頼したラピスラズリーのブルーをご覧いただきたい。
 
 
(文責:学芸部 岡村修二 2012年10月)
 
【今月の一枚】フェルメール、ヤン「デルフトの眺望」
近年特に人気の高い画家といえば・・・代表作「真珠の耳飾りの少女」が現在来日中の17世紀オランダを代表する画家、ヤン・フェルメールです。 
フェルメールは、風景画をたったの2枚しか描きませんでした。そして、その一つである『デルフトの眺望』は、フェルメール自身が生まれ育ち、生涯その人生をすごした町、オランダ、デルフトにある運河沿いの町並みを描いた作品です。
高い空を流れる薄暗く大きな雲の雲間から水面に差し込む光は繊細で、優しい風が水面をなで、小さな波が立っている様子は神々しいほどの透明感を感じます。

フェルメールは、運河の向かい側に立ちこの風景を描いたと言われています。 
前景の岸に立ち話をする女性たち、渡し船に乗ろうとする人々、絵の中にすいこまれそうになるほどの穏やかな生活感に、350年前のデルフトにタイムスリップしてしまうような錯覚さえ覚えます。

空前のフェルメールブームの今、未だ来日していない『デルフトの眺望』を ぜひ大塚国際美術館へ観にいらしてください。 
 
(文責:学芸部 浅井智誉子 2012年9月)
<<大塚国際美術館>> 〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1 TEL:088-687-3737 FAX:088-687-1117