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【今月の1枚】ゴッホ≪麦藁帽子の自画像≫
今月の1枚は、ゴッホの「麦藁帽子の自画像」をご紹介します。ゴッホといえば代表作「ヒマワリ」はもちろんのこと、その顔もよく知られる画家ではないでしょうか。ゴッホは、同じオランダの大画家レンブラントと同じく、多くの自画像を残しており、油彩だけでも40点近くあります。初期オランダ時代にも自画像を描いていますが、1886年春、パリに移ってからその数はにわかに増えており、30点近くにもなります。これだけ集中しているのは、オランダ時代のように身近なモデルが少なかったこと、プロのモデルは高くて頼めなかったことが伺えます。
 
「麦藁帽子の自画像」はゴッホ34歳の頃に描かれました。黄色い麦藁帽子からも想像できるように、ゴッホがパリで迎えた2度目の夏に描かれたもので、前年の春から夏に描かれたものに比べると、色彩は格段に明るく、タッチもきびきびと、生き生きとしています。おそらく当時パリで流行していた印象派の影響でしょう。しかしよくみると、帽子や顔、特に髭や髪を描くタッチは素早く、神経質にも見えます。パリ時代のゴッホは、大都会からよい刺激を受ける反面、都会の慌ただしいリズムや人間関係に神経を苛立てることも少なくなかったようです。鼻の下や耳に点じられた、実際にはない赤色は、この後、耳切り事件を起こすアルルや発作に悩まされたサン・レミ時代を予告しているのかもしれません。
 
当館では、パリ時代の「麦藁帽子の自画像」の下に、背景がぐるぐると渦を巻いたサン・レミ時代の「自画像」も展示しており、比較鑑賞が可能となっています。芸術の秋、“炎の人”と称されるゴッホの自画像に表された、画家の人生と心象に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
 
(文責:富澤 京子 2016年10月) 
 
【今月の1枚】ボス、ヒエロニムス《手品師》
ボスが描いたこの作品に、近づいてよくご覧ください。
 
テーブルを挟んで右に“手品師”、左には‘見物人’や‘客’がいます。
鼻の尖った山高帽をかぶった‘手品師’は、その風貌からしていかにもうさん臭い感じがします。手品師は、小さな玉を取り上げて奇術を披露しているようです。腰に吊るしたかごの中にはふくろうが見えますが、このふくろうは、まやかしの象徴です。そう、実際にはこの手品師は、詐欺師なのです。彼の足もとには、めかし込んだ犬が輪を使った曲芸の出番を待っているようです。左の‘見物人’は総勢10人ですが、その中でも一番目立っているのが、前かがみになった老人。老人のびっくり仰天な顔からは、この詐欺師にすっかり乗せられてしまっています。その様子を、子供がおもしろがって見ていて、老人の後ろでは詐欺師のグルなのでしょうか、とぼけた顔の男が慣れた手つきで老人の財布を盗み取ろうとしています。しかし、手品に熱中している老人はそのことには全く気付いていません。登場人物の心の中までも読み取れるひとりひとりのユーモラスな表情にも注目です。
この1枚の絵の中には、‘だます者’と‘だまされる者’、これを‘面白がって見ている者’と、400年以上も昔のこととは思えない現代の私たちにも身につまされる“世間の縮図”が描かれているのです。
 
ボスの師弟関係や影響関係など、彼の生涯についてはほとんど知られていませんが、とても印象深く、独創的な画家です。目を凝らして見たくなるボスの世界観にわたしは魅了されるのです。
 
(文責:松浦 奈津子 2016年9月) 
 
【今月の1枚】《解放者テセウス》
西暦79年8月24日、イタリア・カンパニア州にあるヴェスヴィオ火山が噴火した(一説には10月という説もある)。この噴火による大きな被害を受けた都市のひとつにヘルクラネウム(エルコラーノ)がある。今回紹介する作品はそこから出土した壁画である。

この壁画は神話を描いたもので、中央でマントを身に着けた男性は英雄テセウス。その周りではテセウスに助けられた子供たちがまとわりつき、足元に倒されたクレタ島の怪物ミノタウロスが描かれている。この神話の筋書きはこうだ。アテナイでは9年ごとに少年と少女、それぞれ7人を怪物ミノタウロスに生贄として捧げることになっていた。テセウスはその取り決めを破棄するためクレタ島にわたり、ミノタウロスを倒し、少年少女たちを助けた。この物語はギリシア美術に繰り返し登場する伝統的な主題で、ローマ人にとってもなじみ深いものだった。

このようにテセウスはとても信仰された英雄だったが、実は別の顔も持っている。この怪物ミノタウロスを倒すとき、クレタ島のミノス王の娘アリアドネの助けを借りていた。アリアドネはテセウスに恋をしており、この戦いの後ミノタウロスに従ってクレタ島を離れる船に乗った。だがなんとテセウスはアリアドネを途中でナクソス島に置き去りにしたのだ。生贄の子供たちを助けた英雄テセウス。しかしその正義感はすべての人に向けられたものではなかったようだ。ちなみにアリアドネはその後、酒の神ディオニソスに見初められている。

このように同じ英雄や女神が持つ色々な話が読めるのが神話のおもしろさだ。ヴェスヴィオ火山による被害、それは当時の人々にとって大変なことだったが、現代に生きる私たちに当時の暮らしがわかる遺産をそのまま残してくれている。
 
 
(文責:内藤寿美子 2016年8月)
 
 
【今月の1枚】アルチンボルド、ジュゼッペ《水》
遠くからみると普通の肖像画。近づいてよく見ると、あっと驚く奇想な絵画をご紹介します。
 
イタリアの画家アルチンボルドが描いた「水」は、人物の横顔が水に関連する生物から構成されていて、様々な種類の魚、カニやエビなどの甲殻類、さらによく見るとタコやカメ、アザラシなども描かれています。それぞれが写実的に描写されていてグロテスクな印象を受ける作品ですが、頭や耳、鼻、顎のかたちなどは大変うまく表現されており、今みても変わった面白い作品です。サンゴの髪飾り、真珠のイヤリングとネックレスをしていることから描かれている人物は女性であることもわかります。
 
16世紀まで、世界を構成する元素は火、空気、水、土の四元素だと信じられていました。人間もまたこれらの元素から組成されていると考えられ、錬金術では火と空気は男性、水と土は女性であるとされていました。
アルチンボルドはこの四元素をそれぞれ人間の姿で表した「火」「大気」「水」「大地」の連作を制作し、当館では「水」と並んで「火」も展示しています。「火」は炎やランプ、銃の部品など、火に関連するものから構成された男性が描かれています。
 
どんなものから人物の横顔が構成されているのか、ご来館の際はぜひ近づいてご覧ください。
 
 (文責:山側千紘 2016年7月)
 
 
【今月の1枚】ブロンズィーノ、アーニョロ《愛と時間の寓意》
16世紀には、絵に隠された難解な謎を含んだ絵画の制作が流行し、この作品もそのひとつとして制作された。

中央のヴィーナスと、その息子キューピッドは愛の擬人像であり、キューピッドの背後には髪をかきむしる老婆がいるが、これは嫉妬を表す。
さらに右側の子どもがピンクの薔薇の切り花を持って踊っている。これははかない快楽を意味している。その後ろの少女は、胴体は爬虫類、尻尾は蛇、足には大 きな爪があり、右手と左手が逆についている。一見、無垢な少女とみせかけて怪物、左手に持つ甘い蜂蜜を与えるとみせかけて右手に持つサソリの毒を与えると いう欺瞞の擬人像が描かれている。

また、背後にいる青いヴェールを剥がそうとしているのは、時の老人で砂時計を背中に背負っている。向かい合った左側にいる仮面をかぶった女性は、時の娘で ある真理だと言われる。これは、古代より伝わる「真理は時の娘」という言葉があるからである。つまり、この場面では、愛は時間の経過とともに真実が表れる という教訓を意味している。

このようにヴィーナスとキューピッドの禁断の愛欲が表現されている背後には、嫉妬や欺瞞などの表現も見える。これは、恋とそれにつきものであるリスクを暗示しており、当時の難解な寓意を楽しんだ作品である。

(文責:川﨑泰寛 2016年6月)

 
【今月の1枚】ポルポラ、パオロ《花》

 背景を真っ暗にして、色とりどりの花を浮きぼりにしたカラヴァッジョ風の明暗表現。チューリップや色々な花、またその香りにひかれて集まってくる蝶は人間の五感の中の「視覚」や「嗅覚」によって得られる快楽を意味しており、肉体の快楽のはかなさを暗示している。

  時代は1600年代、オランダではレンブラントやフェルメールが活躍した時代に、チューリップは球根1個が1頭立ての馬車と同じくらいの値段で取引された。『チューリップバブル』。特に作品に見られる様な斑入りのチューリップは人気が高かった。チューリップの花言葉は「博愛」「思いやり」。また、赤色のチューリップは「愛の告白」とある。

 (文責:岡村修二 2016年5月)

 
【今月の1枚】ミレー、ジャン=フランソワ《春》

「落ち穂拾い」、「晩鐘」で知られる画家、ジャン=フランソワ・ミレーの作品、「春」です。

農民画家と呼ばれたミレーは、早朝から日が暮れるまで黙々と仕事に勤しむ尊い農民の姿を多く描きました。この作品はめずらしく純粋な風景画に近いもので、四季をテーマにした連作のうちの一枚です。

綺麗に耕された畑、小道には春の草花が咲き、両脇にあるのは花をつけた果樹にみえます。空には光が差し始め、虹がかかっています。

通り雨だったのでしょうか、よく見ると、一人の男が中央奥の木の下で雨宿りをしています。清々しい印象の作品です。

鳴門にも春到来です。1階庭園にはチューリップが咲き始め、戸外でのひと時を過ごすのも楽しい季節になりました。ご来館の際は、美術館賞とともにうららかな瀬戸内の春も満喫ください。

(文責:浅井智誉子 2016年4月)

 
【今月の1枚】モネ、クロード《アルジャントゥイユの橋》

日差しが暖かくなり、戸外へ出かけたくなる季節におすすめの一枚をご紹介します。

この絵の舞台は、フランス、パリ近郊のセーヌ河畔の村、アルジャントゥイユ。1871年、ロンドンから帰国した31歳のモネは、この地に落ち着き、約7年間で約170点の作品を残しました。

印象派の画家たちの経済的支援者で友人の裕福な画家、カイユポットが住んでいたことも影響していると考えられ、マネ、ルノワール、シスレー、ピサロなどもこの地で制作、アルジャントゥイユは印象派の誕生と成立を語る上で欠かせない場所となっています。

1840年代に発明され、実用化された、軽便で持ち運びに便利なチューブ入りの絵具も大いに貢献し、印象派の画家たちは、明るい戸外で自然を前にして絵を描きました。

この頃のモネは、川の変幻自在の水の戯れ、水面に揺れる光、空、雲という“自然”に対して、その上にかかるゆるぎない存在感と構築性を示す“人工”の橋を、絵になるモチーフとして発見し、この年だけでも10点あまりのアルジャントゥイユのセーヌ川とそこにかかる橋や鉄道橋を描いています。

この絵はその中の一枚で、水面には揺れ動く舟や家のシルエットが描かれ、明るく澄み切った空気で満たされた画面には、やさしい幸福な時間が流れています。

約150年前、モネもカンヴァスを片手にこの橋を渡り、美しい景色を眺めながらこの絵を描いたのでしょう。

大塚国際美術館のある鳴門公園(瀬戸内海国立公園の一部)にも渦潮で有名な鳴門海峡に架かる壮大な吊り橋“大鳴門橋”があります。

この春は、アートと自然を満喫しに当館に是非お越しください。

(文責:富浦敦子 2016年3月)

 
 
ボス、ヒエロニムス《快楽の園》

 2016年に没後500年を迎えたボス。その生涯、師弟関係、影響関係など、今もって不明の点の多い画家ですが、この《快楽の園》をはじめ作品も謎めいたものが多く、その解釈をめぐっては議論が絶えません。

 三連式祭壇画とよばれる形式をとったこの作品は、固定された中央場面と表裏に描かれた両翼からなり、開いた3つの場面の中央が《快楽の園》、左が《エデンの園》、右が《地獄》、そして閉じたときは《天地創造》が描かれています。不思議なことにこの連作には天国が用意されていないことから、現世において快楽をむさぼった結果として人類はひたすら堕落に向かい、結果として地獄に堕ちるという筋書きが示されている、とも推測できます。

 画面から明らかなように、ボスは奇妙で異様な生物を数多く描き、また自然界の秩序である大小関係も転倒しています。頭を下に、足を上にした人物が要所要所に存在するという「逆さま」のイメージや、水泡かガラス、植物のさやにした丸い殻のような「虚ろ」なものも散見されます。イチゴやサクランボはその甘さゆえ快楽の象徴であり、殻は「ヴァニタス」つまり物質のはかなさの隠喩、また画面の中心に位置する青い球体も、壊れやすいこの世界そのものを意味しているともいえるでしょう。

 ボスの生年は1450年頃とされており、ほぼ同じ時代を生きた画家にレオナルド・ダ・ヴィンチがいます。生涯スヘルストーヘンボス(現オランダ)で過ごし、父、祖父、兄弟も画家という芸術一家で育ちました。1516年に亡くなるまでに残した真筆はわずか20点ともいわれ、数こそ多くないもののその名声は高く、スペイン王フェリペ2世はボスの作品を収集、愛好していたことが知られており、この《快楽の園》も彼の所有でした。

 (文責:土橋加奈子 2016年2月)

 
ルソー、アンリ《異国風景》

新年の干支・さるが描かれている、ルソーの「異国風景」をご紹介しましょう。

 アンリ・ルソーは、19世紀~20世紀フランスの素朴派を代表する画家で、元はパリ市の税関職員を務め、仕事の余暇に絵を描いていた「日曜画家」でした。「子どもの落書きのよう」と、作品を厳しく批判されることもありましたが、自分の才能を信じて描き続け、詩的で自由な想像力にあふれた独自の画風を開花させます。

 晩年のルソーの周りには、詩人アポリネールや画家ピカソなど、ルソーの芸術を高く評価する芸術家たちが集まり、新印象派の創始者スーラや後期印象派を代表するゴーギャンら、同時代の画家も注目する存在となっていました。絵も売れるようになり、ルソーの芸術は少しずつ理解され始めたのです。

「異国風景」は、ルソーが晩年に熱中して描いた熱帯シリーズの一枚。一面に広がるジャングルの葉っぱは、20~30種類もの緑色を使って、丁寧に描いたといわれます。また、樹木に実る柑橘類を思わせる橙色の果実、赤や純白の花々は絵画に絶妙なアクセントをもたらしています。明るい森の中で遊んだり果実を食べたりしているサルの顔はまるで人間のようで、ぎこちない動きとあわせて、なんとも陽気でユーモラスな雰囲気の絵画です。

 実は、画家は実際に南国へ行ったことはなく、パリの植物園でスケッチしたさまざまな植物を組み合わせて、幻想的な風景を作り上げたといわれます。写真や雑誌の挿絵を元に構図を考えた作品があることも判明しており、キュビスムやシュルレアリスムを先取りしたとも言える独創的な絵画世界は高く評価されました。

 こつこつと、信念を持って自分の画風を確立したルソー。

 大塚国際美術館では、ほかにも「戦争」「蛇使い」などルソーの作品5点をご鑑賞いただけます。新年は、美術館で世界旅行気分をお楽しみください。

 

(文責:富澤 京子 2016年1月)

<<大塚国際美術館>> 〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1 TEL:088-687-3737 FAX:088-687-1117