過去のおすすめ

 

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【今月の1枚】ゴッホ、フィンセント・ファン《タラスコンへの道を行く画家》
11月3日(祝・土)より、新しい作品が追加されます。ゴッホの描いた唯一の全身自画像で消失してしまった名画、「タラスコンへの道を行く画家」です。
かつては、ドイツ・マグデブルクのカイザー・フリードリヒ美術館(現マグデブルク文化歴史博物館)が所蔵していたこの作品は、第二次世界大戦の間、戦火を逃れるためにたくさんの美術品とともに、近郊の岩塩坑に疎開されました。美術品が疎開された、岩塩坑は、地中460メートルもの深さで、当時その上にはナチス軍のジェットエンジン工場があり、工場にはドイツ最大のウラン庫もあった為、アメリカ軍の最優先占拠地とされていました。終戦後、アメリカ軍によって解放された時に多くの美術品は発見されましたが、ゴッホの絵があった部屋は2度の火災にみまわれた末、作品は姿を消してしまいました。
「タラスコンへの道を行く画家」は、火災で焼失したのかもしれません。しかし、誰かが価値ある作品のみ持ち去り、それ以外のものは火を放ち、証拠を消したのではないか、という説も拭い去れません。現在、岩塩坑のあった場所は、地盤沈下により入ることができなくなってしまいました。
この作品は、1888年、ゴッホが南フランスのアルルに滞在している間に描かれた作品です。題名にある“タラスコン”とは、アルルからほど近い町の名前です。ゴッホはイーゼルや画材をもってタラスコンに続く道を、お気に入りのモンマジュール修道院まで何度も通ったそうです。その時の自分自身の姿を描いた作品です。
今月、もう見ることができない名作がよみがえります。
(文責:浅井智誉子 2018年11月)
 
【今月の1枚】ミレイ、ジョン・エヴァレット《オフィーリア》
水面に浮かんでいる女性は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」に登場する悲劇のヒロイン、オフィーリア。
恋人である王子ハムレットに冷たくあしらわれ、父親も殺されたオフィーリアは、悲嘆のあまり正気を失い、みずから編んだ花環を川辺の柳の木の枝にかけようとして、誤って川に落ちてしまいました。
 
背景に描かれた自然は、ミレイが1851年の夏に訪れたロンドン南西のサリー州の川岸の実景で、彼は数ヶ月この地に滞在し写生し続けたといわれています。
その中に、意図して詳細に描かれた美しい花々は、それぞれ象徴的な意味があり、例えば、ワスレナグサの花言葉は「わたしを忘れないで」、オフィーリアの心情が伝わってきます。
 
また、モデルを務めた女性は、のちに画家ロセッティの妻となるエリザベス・シッダル。彼女はミレイが用意した古着の時代物のドレスを身にまとい、長時間、冷たい浴槽に身を沈めポーズを取り続けたことで、風邪をひいてしまったともいわれていますが、彼女の表情、水を含んで重くなったドレスの広がりなどから、ミレイの驚嘆に値する細部描写へのこだわりが伺えます。
 
当館では、9月から11月まで「イギリス」をテーマにイベントを開催しております。
是非、この機会に、イギリス絵画に注目してみてはいかがでしょうか?
 
(文責:富浦 敦子 2018年10月)
 
 
【今月の1枚】デューラー、アルブレヒト 《自画像》
デューラーはラファエッロと同時代のドイツ画家で、ドイツにおけるルネサンスの代表者です。金細工師の父のもとで技術を習得、15歳から工房での修行を始め、この後ドイツ各地、スイス、さらにはイタリアに2回旅行しています。
 
この自画像はデューラーが1500年、28歳のときに描きました。キリスト教では1500年、2000年という時の分かれ目が非常に重大な意味を持っており、教会の大聖年にあたっていた1500年はアルクサンデル6世が大規模な免罪を発表し、多くの信徒がローマをめざして巡礼に出かけました。いくつもの不穏な事件が歴史の交代を告げており、悪政による教皇庁の腐敗はやがてルターの反逆を呼び起こし、デューラーもその運動に加わることになります。
 
この時代、正面向きの図式的な構図はイエス・キリストにしか用いられず、王侯貴族や自画像を描くときは、3/4どちらかに向いた姿か、真横から見た構図で制作することが継承されていました。しかしここでのデューラーの真正面を向いた完璧なシンメトリーの姿はまるでイコンのようで、当時の新しい自画像の表現を生み出しています。みずからキリストに倣って、絵画によって何事かをこの世でなそうという、並々ならぬ決意がその目に感じられます。
 
顔の右横に金文字のラテン語で「1500年に28歳のデューラーが不滅の色で自分を描いた」と記しており、左側には1500の数字と、自身の名アルブレヒト・デューラーの頭文字AとDを組み合わせて図案化したサイン(モノグラム)を描いているのも新しい点です。
 
当館では作品に近づいて鑑賞できる特性を生かし、虫眼鏡を使って鑑賞する体験型アートツアー「美術探偵 7つの署名」を開始します。フェルメール、ブリューゲル、マネなど、画家のサインを見出しながら名画に描かれた細部の美をじっくり鑑賞しませんか。
(文責:土橋 加奈子  2018年9月)
 
 
【今月の1枚】ゴッホ、フィンセント・ファン《自画像》
《ヒマワリ》の画家ゴッホは同じオランダの画家レンブラントとともに、多くの自画像を描いた画家としても知られています。油彩画だけでも40点近くあり、そのうち30点近くがパリ時代のものです。大都会パリでは、刺激を受ける一方、都会特有の慌ただしいリズムや必ずしも順調でなかった人間関係などに神経を苛立てることも少なくなかったゴッホは、その後、パリから太陽の光がふりそそぐ南フランスのアルルへ移ります。花瓶に活けられた7点の《ヒマワリ》を描き、また、それまで潜在的だったゴッホの“狂気”が顕在化したのがこのアルルでした。1888年のクリスマスの時のゴーギャンへの障害未遂とその後のいわゆる耳切り事件は、最初の顕著な“発作”であり、ゴッホはアルルの住民からつまはじきにされてしまいます。自身も精神面の健康に不安を頂いたゴッホは、1889年5月、アルルに近いサン=レミの病院に入院し、治療を受けました。この《自画像》はサン=レミ時代の作とされていますが、パリ時代説、あるいはこの後のオーヴェール時代説もあります。
 
いずれにしても、顔や頭の部分から衣服、背景にいたるまで、そのタッチは的確で力強く、画面をつつむグリーン系の色彩の統一感、バランスのよさも注目すべき作品です。背景のうねり、渦巻くような曲線は、この頃の作品に繰り返し登場しており、体調がすぐれない中、ゴッホらしさが開花した時代ともいえます。
 
さて、大塚国際美術館で7月18日(水)より開催中の「#アートコスプレ・フェス2018 feat. ゴッホ」(2018年10月28日まで)では、ゴッホの名画に描かれた衣装やゴッホが影響を受けた画家の作品の衣装を館内9カ所に設置しており、来館者はどなたでも自由に服の上から身につけて体験や記念撮影を楽しんでもらえます。この《自画像》からはジャケットを、絵画からイメージしたさわやかな色の生地に刺繍で渦巻きをほどこし、京都造形芸術大学の学生さんの制作協力で再現しています。渦巻きの壁紙の前に立ち、絵画の主人公(ゴッホ)になった気分を味わってみてください。
(文責:富澤 京子 2018年8月)
 
【今月の1枚】リーバーマン、マックス 《ミュンヘンのビア・ガーデン》
この作品を描いた、マックス・リーバーマンは、ドイツ印象派を代表する画家で1870年代にはパリに数年滞在しましたが、彼が共感を寄せたのは、当時、頭角をあらわしつつあったモネ、ルノワールなどの印象派よりも、ミレー、クールベなどのリアリズムの芸術でした。しかし1880年代に入ると彼は印象派的な作風を展開しました。
 
本作は、ミュンヘン市内にある今も市民の憩いの場として親しまれている広大な英国式庭園の中にあるビア・ガーデンを描いたものです。
画面奥の方では、音楽隊の指揮者であろう男性が大きく手を振っており、何か演奏中のように見えます。手前では、かわいらしい子どもたちが遊び道具を手にしていたり、喉が渇いたのか、母親らしき女性から水をもらっている女の子の姿もあります。テーブルでは、ビールを仲立ちとして知らぬどうしが一家団欒のように和むという、いかにもドイツらしい光景です。老若男女が1つの場所に集まり、和気あいあいと同じ時間を過ごす情景が幸福感さえ覚えます。
 
テーブルやイス、登場人物が身に付ける服の白、地面に映る木漏れ日の表現に印象派を意識しますが、本家モネやルノワールに比べると、人物や樹木など細部描写にこだわっているのが目につきます。これは、ミレー、クールベに学んだ初期のリアリズムの名残なのでしょう。
 
 
さて7~8月の当館イベント『1年まるごとゴッホの「ヒマワリ」』第2弾のテーマは、ドイツ!
この作品の舞台となっているドイツ、ミュンヘンでは、毎年9月に世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」が行われています。そこで演奏されるヨーロッパアルプス地方の伝統音楽「オーバークライナー」のコンサートを、日本での第一人者エーデルワイスカペレを迎えて7月28日・29日の2日間限定で当館で開催します。絵画鑑賞とともに、陽気な音楽でドイツのお祭り気分を味わってみませんか♪
(文責:松浦 奈津子 2018年7月)
 
 
【今月の1枚】マルティーニ、シモーネ《受胎告知と二聖人》
今回ご紹介する絵画はマルティーニ、シモーネが描いた「受胎告知と二聖人」。
受胎告知とは、神によって遣わされた大天使ガブリエルが処女であった聖母マリアの元に現れ、マリアが神に選ばれ、神の子の母になることを告げるという話だ。受胎告知が行われた季節は花の季節とされ、一般に3月25日とされている。
ここで、なぜ6月の1枚に「受胎告知」を選んだのかと思う人もいるだろう。過去の「今月の1枚」でも3月の記事にレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「受胎告知」を掲載している。しかし今回はこのテーマではなく、作品に描かれた植物を紹介したい。
本作には中央に白ユリ、大天使ガブリエルの手にオリーブの枝葉が描かれている。
白ユリは純潔を表し、聖母マリアのシンボルとされている。多くの「受胎告知」に描かれており、この当時、フィレンツェの紋様でもあったが、この作品を描いたシモーネはフィレンツェの敵であったシエナの派閥だった。この政治的理由から、白ユリには大天使ガブリエルの手元に描かず床の上の壺に生けられている。花の種類は古くからヨーロッパの人々に親しまれたマドンナ・リリー。6月は花を見られる季節だ。しかし日本では気候風土がなじまないため、あまり栽培されていない。
オリーブは平和の象徴とされ、これも6月に花を見ることが出来る。旧約聖書の「ノアの箱舟」では洪水が終わった後にノアが放ったハトがオリーブの枝をくわえて戻ったことから、ハトと共にオリーブが平和の象徴となったとされる。
このように絵の中の花や植物に注目して鑑賞するのも、絵画を楽しむ一つの切り口といえる。鑑賞の際にはぜひ展示室の中で季節を感じてみてほしい。
(文責:内藤 寿美子 2018年6月)
 
 
【今月の1枚】シュピッツヴェーク、カール《蝶の捕獲》
ドイツの画家、シュピッツヴェークが描いたユーモアのある作品です。
南ドイツのミュンヘンで生まれ育ったシュピッツヴェークは、人の心の機微をユーモアや皮肉を込めて表現した、絵画における数少ないユーモリストの一人です。バイエルン地方の美しい自然を描くことも多く、印象派に通じるアット・ホームな自然表現も作品の特徴の一つですが、この絵にある自然はドイツと言うよりはどこかの熱帯林のような風情で、トロピカルな熱気を感じさせます。
 
熱帯林で大きな美しい蝶を発見した蝶のコレクター。
でもなぜか、喜ぶというよりも驚愕し、当惑し、立ちすくんでいます。
よく見ると、その手にある網はあまりに小さく、せっかくの見事な蝶を捕獲することはできそうにありません。太陽の光が反射した眼鏡で表情はよく見えませんが、それが彼の複雑な心境を、むしろよく表しているように見えます。類まれなる蝶を発見したというのに、自分には捕まえることができない・・・彼の当惑と喜びは計り知れません。
 
こうした状況的にちぐはぐなズレの感覚や、どこか憎めない人物像もまた、シュピッツヴェークの表現する“ユーモア”なのです。
(文責:畑中 真弓 2018年5月)
 
 
【今月の1枚】ゴッホ、フィンセント・ファン《ヒマワリ》
“ヒマワリの画家”とも呼ばれるフィンセント・ファン・ゴッホ。彼はパリ時代にもヒマワリの花を題材に、数点描いていますが、花瓶にヒマワリのみが生けられた作品は、1888年に移り住んだ南フランスのアルルで描きました。

彼は南フランスのアルルで、尊敬するゴーギャンの到着を待ちわび、共同生活の為に借りた「黄色い家」のアトリエを飾るために花瓶に入った「ヒマワリ」を描きました。1888年8月、ゴッホはまず3輪の花が花瓶に入った作品を描き、次にとりかかった作品では、初めに描いた作品の構図を応用し、手前に3輪の花を配置しました。この2番目に描いた「ヒマワリ」は、浮世絵を意識した輪郭線、際立つ色彩のコントラスト、装飾的な色面分割を強調し、背景にロイヤルブルーを用いることで、まるでステンドグラスのような効果を生み出しています。3番目に制作した作品は先の2作品よりもヒマワリの数を増やし、花瓶にサインを描きました。そして4番目に描いた作品は、背景に明るい黄色を選び、「明るい色彩を背景にした明るい色彩の効果」を改善するために、主題と背景の明暗のコントラストを和らげました。なんとゴッホはこの4点の「ヒマワリ」を、1888年8月のわずか数日間で仕上げています。
 
ゴーギャンがアルルに到着したのは1888年10月。約2か月後に共同生活は破たんしますが、ゴッホは1889年1月に3点の「ヒマワリ」を制作しました。ヒマワリは夏の花であるため、5番目と7番目に制作した「ヒマワリ」は4番目の作品を、6番目に制作した「ヒマワリ」は3番目に制作した作品を、それぞれ模写したとされています。背景の色やヒマワリの形状は確かによく似ていますが、サインの有無や位置、花の中心部の色使いなど、見比べるとそれぞれ違いがあることに気づきます。
 
7点の花瓶の「ヒマワリ」は、ゴッホがこの世を去った後、オランダ、日本、ドイツ、イギリス、アメリカと世界各地に点在し、なかには個人蔵や、かつて日本にありながら戦禍で焼失した作品もあります。大塚国際美術館では、花瓶の「ヒマワリ」全7点を陶板で原寸大に再現し、ゴッホが制作した順に、展示室左の壁から並べて展示していますので、それぞれの作品をじっくりご堪能ください。
(文責:山側 千紘 2018年4月)
 
 
【今月の1枚】パルミジャニーノ《凸面鏡の自画像》
ルネサンス時代に凸面鏡などが普及し、光学への理解が深まると、画家たちは肉眼とは違う、鏡に映るもう一つの世界に着目するようになります。
 
本作は、直径わずか24cmの円形の板へ、凸面鏡に映った自分を描いています。鏡には正確な像が映るという概念を覆し、鏡の面に歪みがあれば正確な描写をしても歪んだ像になるという奇想が、マニエリスムの画家たちの趣味に合致していました。
 
パルミジャニーノは凸面鏡に映るイメージの歪みを利用し、平面鏡だったら映らないような天井や窓枠、金の額縁(画面右)などを描いています。そして、自身の前方に置かれた手は非常に大きく描かれていることから、手を使った仕事、つまり画家という職業の暗示にも見えますが、これは凸面鏡特有の視覚的トリックが表現されていると言えます。
 
このような視覚的トリックに強い関心を持っていたパルミジャニーノは、ラファエッロの再来として期待されましたが、晩年には錬金術に没頭し、変わり者のような扱いをされたと言われています。
 
(文責:川崎泰寛 2018年3月)
 
【今月の1枚】ドガ、エドガー《ダンス教室》
今月は、ドガが描いた「ダンス教室」をご紹介いたします。
「踊り子の画家」と言われるほど、ドガの踊り子の作品はポピュラーです。バレエの踊り子は彼にとって生涯、興味の尽きない題材で、舞台の場面だけではなく、本作のように人間のありのままの姿を見ることができる舞台裏や稽古風景も描きました。画家自ら踊り子の舞台裏に足を運び、厳しい稽古の様子を描いた最初の画家と伝えられています。
 
本作のドガの視線は、スナップショット的にとらえたある瞬間の光景に注がれています。踊り子たちの意識は画家に向かわず、画面中央の棒にもたれて立つ白髪の教師に向かっています。遠近法を利かせた奥行きのある画面には、20人近い踊り子が描かれていますが、かつては自らも舞台で活躍していた有名なダンス教師、ジュール・ペロに対する反応はまちまちで、それがこの作品の面白さを感じさせるひとつになっています。
 
彼の言葉に熱心に聴き入る弟子もいますが、大半は横や下を向いたり勝手に踊ったりと優等生とは言いがたい様子です。また、左端でピアノに腰掛けている踊り子は、背中を掻いていてエレガントとは言えない仕草ですが、人間のありのままを描くドガらしさが表れています。
 
当館には、オルセー美術館所蔵の「花束を持つ踊り子」「舞台の踊り子(エトワール)」「青い踊り子」など10点のドガの魅力を感じられる展示室がございます。ご来館の際は、ぜひご鑑賞ください。
 
(文責:吉本 早希 2018年2月)
<<大塚国際美術館>> 〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1 TEL:088-687-3737 FAX:088-687-1117