過去のおすすめ

 

過去のおすすめ一覧

過去のおすすめ一覧
フォーム
 
【今月の1枚】ルノワール《団扇をもつ少女》
今月は、新年を祝うにふさわしい、華やかさと明るさに満ちたルノワールの作品、「団扇をもつ少女」をご紹介します。
 
彼が描く多くの女性肖像と同様、この作品からも親近感やあたたかみ、愛らしさなどが感じられます。
 
花飾りがついた麦藁帽子をかぶっている少女は、フランスの国立劇場コメディー・フランセーズの人気女優になったジャンヌ・サマリー。ルノワールのお気に入りのモデルで、彼女の魅力に惹かれた彼は何度も描きました。わずかに見える椅子の背もたれから、椅子に座って視線を向けていることが伝わってきます。
 
19世紀中頃のパリ万国博覧会の開催により、ジャポニスム(日本趣味)が沸き起こり、日本からの美術工芸品などの出品は印象派の画家たちに影響を与えました。ルノワールは、マネやモネ、ドガのように日本美術を研究し、その成果を自身の芸術に生かしたわけではありませんが、この絵は彼のジャポニスム(日本趣味)の好例ともいえます。
 
英国風タータンチェックの洋服、右手に持たれた日本風の団扇や日本の菊を思わせる花々から、当時の流行を取り入れた作品とも見受けられますが、関心が寄せられた日本のアイテムのひとつである団扇は、ここでは涼をとるための実用性はなく、アクセサリーのひとつとして役割を果たしています。また、画面右半分を占める花束が、少女の美しさ、艶やかさとマッチしており、これとは対照的である緑のストライプのシンプルな装飾的効果も注目したい点です。
 
「幸福」をテーマにしていたルノワールが描く人物たちは、いつもほほ笑み、優しい表情をしています。彼の作品のように、たくさんの幸せが花開く1年となりますように。
 
(文責:吉本 早希 2019年1月)
 
 
 
【今月の1枚】ゴーギャン、ポール《黄色いキリスト》
7枚の≪ヒマワリ≫を鑑賞後、是非ご覧いただきたい今月の1枚。
この作品を描く少し前、南フランス、アルルの町でゴッホとの共同作業生活は、いさかいが 絶えず僅か2ヶ月で終わってしまった。その直後、ゴーギャンはブルターニュ行きを思い立つ。 たどり着いたのは、素朴な文化と中世キリスト教が息づくブルターニュ地方、ポン・タヴェン村。 描かれているのは、秋枯れた田園風景を背に聖女なのか3人の農婦に見守られ、意識も もうろうとして諦めにも似た表情を浮かべるイエス・キリスト。どこか画家ゴーギャン自身にも 見て取れる。独特の白い帽子をかぶったポン・タヴェンに見られる民族衣装の女性達が ひざまづく村は、原始的なものに心ひかれたゴーギャンの創作意欲をより一層掻き立てた。 ついに,〝自らの芸術〟をこの地で創造し、彼を慕った多くの若い画家達が集うようになる。 芸術家の苦悩をキリストの受難になぞらえて、単純な型と明確な輪郭線そして鮮やかな 色彩によって独自の画風を確立させた。 『ポン・タヴェン派』の誕生である。この≪黄色いキリスト≫を描いた2年後の1891年、 ひとりであの「南の楽園 タヒチ」へと向かった。
 
(文責:岡村修二 2018年12月)
 
【今月の1枚】ゴッホ、フィンセント・ファン《タラスコンへの道を行く画家》
11月3日(祝・土)より、新しい作品が追加されます。ゴッホの描いた唯一の全身自画像で消失してしまった名画、「タラスコンへの道を行く画家」です。
かつては、ドイツ・マグデブルクのカイザー・フリードリヒ美術館(現マグデブルク文化歴史博物館)が所蔵していたこの作品は、第二次世界大戦の間、戦火を逃れるためにたくさんの美術品とともに、近郊の岩塩坑に疎開されました。美術品が疎開された、岩塩坑は、地中460メートルもの深さで、当時その上にはナチス軍のジェットエンジン工場があり、工場にはドイツ最大のウラン庫もあった為、アメリカ軍の最優先占拠地とされていました。終戦後、アメリカ軍によって解放された時に多くの美術品は発見されましたが、ゴッホの絵があった部屋は2度の火災にみまわれた末、作品は姿を消してしまいました。
「タラスコンへの道を行く画家」は、火災で焼失したのかもしれません。しかし、誰かが価値ある作品のみ持ち去り、それ以外のものは火を放ち、証拠を消したのではないか、という説も拭い去れません。現在、岩塩坑のあった場所は、地盤沈下により入ることができなくなってしまいました。
この作品は、1888年、ゴッホが南フランスのアルルに滞在している間に描かれた作品です。題名にある“タラスコン”とは、アルルからほど近い町の名前です。ゴッホはイーゼルや画材をもってタラスコンに続く道を、お気に入りのモンマジュール修道院まで何度も通ったそうです。その時の自分自身の姿を描いた作品です。
今月、もう見ることができない名作がよみがえります。
(文責:浅井智誉子 2018年11月)
 
【今月の1枚】ミレイ、ジョン・エヴァレット《オフィーリア》
水面に浮かんでいる女性は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」に登場する悲劇のヒロイン、オフィーリア。
恋人である王子ハムレットに冷たくあしらわれ、父親も殺されたオフィーリアは、悲嘆のあまり正気を失い、みずから編んだ花環を川辺の柳の木の枝にかけようとして、誤って川に落ちてしまいました。
 
背景に描かれた自然は、ミレイが1851年の夏に訪れたロンドン南西のサリー州の川岸の実景で、彼は数ヶ月この地に滞在し写生し続けたといわれています。
その中に、意図して詳細に描かれた美しい花々は、それぞれ象徴的な意味があり、例えば、ワスレナグサの花言葉は「わたしを忘れないで」、オフィーリアの心情が伝わってきます。
 
また、モデルを務めた女性は、のちに画家ロセッティの妻となるエリザベス・シッダル。彼女はミレイが用意した古着の時代物のドレスを身にまとい、長時間、冷たい浴槽に身を沈めポーズを取り続けたことで、風邪をひいてしまったともいわれていますが、彼女の表情、水を含んで重くなったドレスの広がりなどから、ミレイの驚嘆に値する細部描写へのこだわりが伺えます。
 
当館では、9月から11月まで「イギリス」をテーマにイベントを開催しております。
是非、この機会に、イギリス絵画に注目してみてはいかがでしょうか?
 
(文責:富浦 敦子 2018年10月)
 
 
【今月の1枚】デューラー、アルブレヒト 《自画像》
デューラーはラファエッロと同時代のドイツ画家で、ドイツにおけるルネサンスの代表者です。金細工師の父のもとで技術を習得、15歳から工房での修行を始め、この後ドイツ各地、スイス、さらにはイタリアに2回旅行しています。
 
この自画像はデューラーが1500年、28歳のときに描きました。キリスト教では1500年、2000年という時の分かれ目が非常に重大な意味を持っており、教会の大聖年にあたっていた1500年はアルクサンデル6世が大規模な免罪を発表し、多くの信徒がローマをめざして巡礼に出かけました。いくつもの不穏な事件が歴史の交代を告げており、悪政による教皇庁の腐敗はやがてルターの反逆を呼び起こし、デューラーもその運動に加わることになります。
 
この時代、正面向きの図式的な構図はイエス・キリストにしか用いられず、王侯貴族や自画像を描くときは、3/4どちらかに向いた姿か、真横から見た構図で制作することが継承されていました。しかしここでのデューラーの真正面を向いた完璧なシンメトリーの姿はまるでイコンのようで、当時の新しい自画像の表現を生み出しています。みずからキリストに倣って、絵画によって何事かをこの世でなそうという、並々ならぬ決意がその目に感じられます。
 
顔の右横に金文字のラテン語で「1500年に28歳のデューラーが不滅の色で自分を描いた」と記しており、左側には1500の数字と、自身の名アルブレヒト・デューラーの頭文字AとDを組み合わせて図案化したサイン(モノグラム)を描いているのも新しい点です。
 
当館では作品に近づいて鑑賞できる特性を生かし、虫眼鏡を使って鑑賞する体験型アートツアー「美術探偵 7つの署名」を開始します。フェルメール、ブリューゲル、マネなど、画家のサインを見出しながら名画に描かれた細部の美をじっくり鑑賞しませんか。
(文責:土橋 加奈子  2018年9月)
 
 
【今月の1枚】ゴッホ、フィンセント・ファン《自画像》
《ヒマワリ》の画家ゴッホは同じオランダの画家レンブラントとともに、多くの自画像を描いた画家としても知られています。油彩画だけでも40点近くあり、そのうち30点近くがパリ時代のものです。大都会パリでは、刺激を受ける一方、都会特有の慌ただしいリズムや必ずしも順調でなかった人間関係などに神経を苛立てることも少なくなかったゴッホは、その後、パリから太陽の光がふりそそぐ南フランスのアルルへ移ります。花瓶に活けられた7点の《ヒマワリ》を描き、また、それまで潜在的だったゴッホの“狂気”が顕在化したのがこのアルルでした。1888年のクリスマスの時のゴーギャンへの障害未遂とその後のいわゆる耳切り事件は、最初の顕著な“発作”であり、ゴッホはアルルの住民からつまはじきにされてしまいます。自身も精神面の健康に不安を頂いたゴッホは、1889年5月、アルルに近いサン=レミの病院に入院し、治療を受けました。この《自画像》はサン=レミ時代の作とされていますが、パリ時代説、あるいはこの後のオーヴェール時代説もあります。
 
いずれにしても、顔や頭の部分から衣服、背景にいたるまで、そのタッチは的確で力強く、画面をつつむグリーン系の色彩の統一感、バランスのよさも注目すべき作品です。背景のうねり、渦巻くような曲線は、この頃の作品に繰り返し登場しており、体調がすぐれない中、ゴッホらしさが開花した時代ともいえます。
 
さて、大塚国際美術館で7月18日(水)より開催中の「#アートコスプレ・フェス2018 feat. ゴッホ」(2018年10月28日まで)では、ゴッホの名画に描かれた衣装やゴッホが影響を受けた画家の作品の衣装を館内9カ所に設置しており、来館者はどなたでも自由に服の上から身につけて体験や記念撮影を楽しんでもらえます。この《自画像》からはジャケットを、絵画からイメージしたさわやかな色の生地に刺繍で渦巻きをほどこし、京都造形芸術大学の学生さんの制作協力で再現しています。渦巻きの壁紙の前に立ち、絵画の主人公(ゴッホ)になった気分を味わってみてください。
(文責:富澤 京子 2018年8月)
 
【今月の1枚】リーバーマン、マックス 《ミュンヘンのビア・ガーデン》
この作品を描いた、マックス・リーバーマンは、ドイツ印象派を代表する画家で1870年代にはパリに数年滞在しましたが、彼が共感を寄せたのは、当時、頭角をあらわしつつあったモネ、ルノワールなどの印象派よりも、ミレー、クールベなどのリアリズムの芸術でした。しかし1880年代に入ると彼は印象派的な作風を展開しました。
 
本作は、ミュンヘン市内にある今も市民の憩いの場として親しまれている広大な英国式庭園の中にあるビア・ガーデンを描いたものです。
画面奥の方では、音楽隊の指揮者であろう男性が大きく手を振っており、何か演奏中のように見えます。手前では、かわいらしい子どもたちが遊び道具を手にしていたり、喉が渇いたのか、母親らしき女性から水をもらっている女の子の姿もあります。テーブルでは、ビールを仲立ちとして知らぬどうしが一家団欒のように和むという、いかにもドイツらしい光景です。老若男女が1つの場所に集まり、和気あいあいと同じ時間を過ごす情景が幸福感さえ覚えます。
 
テーブルやイス、登場人物が身に付ける服の白、地面に映る木漏れ日の表現に印象派を意識しますが、本家モネやルノワールに比べると、人物や樹木など細部描写にこだわっているのが目につきます。これは、ミレー、クールベに学んだ初期のリアリズムの名残なのでしょう。
 
 
さて7~8月の当館イベント『1年まるごとゴッホの「ヒマワリ」』第2弾のテーマは、ドイツ!
この作品の舞台となっているドイツ、ミュンヘンでは、毎年9月に世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」が行われています。そこで演奏されるヨーロッパアルプス地方の伝統音楽「オーバークライナー」のコンサートを、日本での第一人者エーデルワイスカペレを迎えて7月28日・29日の2日間限定で当館で開催します。絵画鑑賞とともに、陽気な音楽でドイツのお祭り気分を味わってみませんか♪
(文責:松浦 奈津子 2018年7月)
 
 
【今月の1枚】マルティーニ、シモーネ《受胎告知と二聖人》
今回ご紹介する絵画はマルティーニ、シモーネが描いた「受胎告知と二聖人」。
受胎告知とは、神によって遣わされた大天使ガブリエルが処女であった聖母マリアの元に現れ、マリアが神に選ばれ、神の子の母になることを告げるという話だ。受胎告知が行われた季節は花の季節とされ、一般に3月25日とされている。
ここで、なぜ6月の1枚に「受胎告知」を選んだのかと思う人もいるだろう。過去の「今月の1枚」でも3月の記事にレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「受胎告知」を掲載している。しかし今回はこのテーマではなく、作品に描かれた植物を紹介したい。
本作には中央に白ユリ、大天使ガブリエルの手にオリーブの枝葉が描かれている。
白ユリは純潔を表し、聖母マリアのシンボルとされている。多くの「受胎告知」に描かれており、この当時、フィレンツェの紋様でもあったが、この作品を描いたシモーネはフィレンツェの敵であったシエナの派閥だった。この政治的理由から、白ユリには大天使ガブリエルの手元に描かず床の上の壺に生けられている。花の種類は古くからヨーロッパの人々に親しまれたマドンナ・リリー。6月は花を見られる季節だ。しかし日本では気候風土がなじまないため、あまり栽培されていない。
オリーブは平和の象徴とされ、これも6月に花を見ることが出来る。旧約聖書の「ノアの箱舟」では洪水が終わった後にノアが放ったハトがオリーブの枝をくわえて戻ったことから、ハトと共にオリーブが平和の象徴となったとされる。
このように絵の中の花や植物に注目して鑑賞するのも、絵画を楽しむ一つの切り口といえる。鑑賞の際にはぜひ展示室の中で季節を感じてみてほしい。
(文責:内藤 寿美子 2018年6月)
 
 
【今月の1枚】シュピッツヴェーク、カール《蝶の捕獲》
ドイツの画家、シュピッツヴェークが描いたユーモアのある作品です。
南ドイツのミュンヘンで生まれ育ったシュピッツヴェークは、人の心の機微をユーモアや皮肉を込めて表現した、絵画における数少ないユーモリストの一人です。バイエルン地方の美しい自然を描くことも多く、印象派に通じるアット・ホームな自然表現も作品の特徴の一つですが、この絵にある自然はドイツと言うよりはどこかの熱帯林のような風情で、トロピカルな熱気を感じさせます。
 
熱帯林で大きな美しい蝶を発見した蝶のコレクター。
でもなぜか、喜ぶというよりも驚愕し、当惑し、立ちすくんでいます。
よく見ると、その手にある網はあまりに小さく、せっかくの見事な蝶を捕獲することはできそうにありません。太陽の光が反射した眼鏡で表情はよく見えませんが、それが彼の複雑な心境を、むしろよく表しているように見えます。類まれなる蝶を発見したというのに、自分には捕まえることができない・・・彼の当惑と喜びは計り知れません。
 
こうした状況的にちぐはぐなズレの感覚や、どこか憎めない人物像もまた、シュピッツヴェークの表現する“ユーモア”なのです。
(文責:畑中 真弓 2018年5月)
 
 
【今月の1枚】ゴッホ、フィンセント・ファン《ヒマワリ》
“ヒマワリの画家”とも呼ばれるフィンセント・ファン・ゴッホ。彼はパリ時代にもヒマワリの花を題材に、数点描いていますが、花瓶にヒマワリのみが生けられた作品は、1888年に移り住んだ南フランスのアルルで描きました。

彼は南フランスのアルルで、尊敬するゴーギャンの到着を待ちわび、共同生活の為に借りた「黄色い家」のアトリエを飾るために花瓶に入った「ヒマワリ」を描きました。1888年8月、ゴッホはまず3輪の花が花瓶に入った作品を描き、次にとりかかった作品では、初めに描いた作品の構図を応用し、手前に3輪の花を配置しました。この2番目に描いた「ヒマワリ」は、浮世絵を意識した輪郭線、際立つ色彩のコントラスト、装飾的な色面分割を強調し、背景にロイヤルブルーを用いることで、まるでステンドグラスのような効果を生み出しています。3番目に制作した作品は先の2作品よりもヒマワリの数を増やし、花瓶にサインを描きました。そして4番目に描いた作品は、背景に明るい黄色を選び、「明るい色彩を背景にした明るい色彩の効果」を改善するために、主題と背景の明暗のコントラストを和らげました。なんとゴッホはこの4点の「ヒマワリ」を、1888年8月のわずか数日間で仕上げています。
 
ゴーギャンがアルルに到着したのは1888年10月。約2か月後に共同生活は破たんしますが、ゴッホは1889年1月に3点の「ヒマワリ」を制作しました。ヒマワリは夏の花であるため、5番目と7番目に制作した「ヒマワリ」は4番目の作品を、6番目に制作した「ヒマワリ」は3番目に制作した作品を、それぞれ模写したとされています。背景の色やヒマワリの形状は確かによく似ていますが、サインの有無や位置、花の中心部の色使いなど、見比べるとそれぞれ違いがあることに気づきます。
 
7点の花瓶の「ヒマワリ」は、ゴッホがこの世を去った後、オランダ、日本、ドイツ、イギリス、アメリカと世界各地に点在し、なかには個人蔵や、かつて日本にありながら戦禍で焼失した作品もあります。大塚国際美術館では、花瓶の「ヒマワリ」全7点を陶板で原寸大に再現し、ゴッホが制作した順に、展示室左の壁から並べて展示していますので、それぞれの作品をじっくりご堪能ください。
(文責:山側 千紘 2018年4月)
 
<<大塚国際美術館>> 〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1 TEL:088-687-3737 FAX:088-687-1117