おすすめの今月の1枚

   
大塚国際美術館スタッフが毎月おすすめの作品をご紹介。
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【今月の1枚】フェルメール、ヤン《手紙を読む女》 

【今月の1枚】フェルメール、ヤン《手紙を読む女》 
 
17世紀オランダの風俗画(さまざまな階層の風俗や日常生活を描いた絵画)には、郵便制度の発達もあり、手紙を読んだり書いたりすることに没頭している女性の絵が数多く見られます。特に恋愛という目に見えないテーマを描く際、手紙はアイテムとして効果的に使われ、オランダを代表する画家フェルメールもこの題材を好みました。彼は43年の生涯で残した30数点の作品うち、手紙をモチーフにした作品を6点制作しています。
 
6点のうちのひとつ「手紙を読む女」は、青い服を着た一人の女性が手紙を読んでいる場面を描いた作品で、別名「青衣の女」とも呼ばれています。
フェルメール初期の作品「窓辺で手紙を読む女」とよく似た構図ですが、画家の成熟期に描かれた「手紙を読む女」は、初期のものに比べ、人物が周りの情景を支配し、画面の中心となっています。また左にあるはずの窓は、絶妙な光の表現によってその存在が暗示されており、全景の椅子が画面の右縁で唐突に切断されるなど、より大胆で熟練されたものになっています。控えめな色調が全体の静まりかえった雰囲気をいっそう強め、極端に少ない色数は、画家があえて自らの技術を試しているかのようです。
 
さて、画中の女性が読んでいる手紙は一体誰から送られてきたものなのでしょうか。
部屋の中には椅子が2脚あり、机の上には慌てて開封したかのようにみえる封筒、その横には真珠のネックレスが描かれています。壁には大きな地図がかかっており、この地図は愛する人が遠く離れた場所にいることを暗示していると考えられています。
「想い人からなかなか送られてこない手紙を待ちわびていた女性が、出かける支度をしていたところ、手紙が届き、急いで開封し、一心不乱に読んでいる。」
そんな風に想像すると、彼女の表情が不安から解き放たれ、少し安心しているようにも見えてきませんか。相手を想う気持ち、恋する気持ちが伝わってくる、バレンタインシーズンにぴったりな1枚です。
 
(文責:山側千紘 2019年2月)
 
 
フェルメール、ヤン《手紙を読む女》
フェルメール、ヤン【1632-1675】
「手紙を読む女」
1663年頃
油彩・カンヴァス/46.5×39㎝
アムステルダム国立美術館、アムステルダム、オランダ
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