おすすめの今月の1枚

   
大塚国際美術館スタッフが毎月おすすめの作品をご紹介。
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【今月の1枚】ルノワール、オーギュスト《ボート遊びの人々の食事》

【今月の1枚】ルノワール、オーギュスト《ボート遊びの人々の食事》
 
パリ郊外、セーヌ河畔の町は1800年代後半、鉄道網の発達に伴い、パリっ子たちにとって格好の行楽地であった。人々は休日になると汽車で郊外へ出かけ、ボートやヨット、水遊びに興じ、その後の食事も大きな楽しみの一つであった。
 
今月の一枚の舞台になったレストランは、セーヌ河畔に今もある水上レストラン「フルネーズ」。画面左側に立っている麦わら帽子の男性が、レストランの主人 アルフォンス・フルネーズ(34歳)、手前の子犬をあやしている女性が、9年後のルノワール夫人 アリーヌ・シャリゴ(22歳)。印象派特有の柔らかい筆致で〝生きる歓び〟を明るく描き、登場人物の会話や笑い声が今にも聞こえてくるようだ。
 
並べられた食卓の上の食事は、〝しあわせ色〟できらきら輝いている。しかし、この時、ルノワール本人は印象派の技法に限界を感じていたという。彼は本質的に人物画の画家であり、モデルの明瞭な顔の輪郭線は、印象主義の技法では表現できないと行き詰まり、悩んでいた。悩んだ末、この年(1881年)の10月、印象派の画風を離れ、古典主義的な絵画を目指すためイタリアへ1年間旅立つ。

旅先では、特にルネサンスの巨匠ラファエッロの作品《小椅子の聖母》に触れて感銘を受け、帰国後すぐに《都会のダンス》《田舎のダンス》を描く。今月の一枚《ボート遊びの・・・》は印象派としてのルノワール最後の大作であり、彼の心の葛藤がうかがえる傑作でもある。
 
(文責:岡村修二 2018年1月)
 
 
ルノワール《ボート遊びの人々の食事》
《ボート遊びの人々の食事》
ルノワール、オーギュスト(1841-1919)
フィリップス・コレクション、ワシントン、アメリカ
油彩、カンヴァス/129.5×172.7cm
1881年

※写真は大塚国際美術館の展示作品を撮影したものです
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