おすすめの今月の1枚

   
大塚国際美術館スタッフが毎月おすすめの作品をご紹介。
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【今月の1枚】グリューネヴァルト、マティアス《イーゼンハイムの祭壇画》

【今月の1枚】グリューネヴァルト、マティアス《イーゼンハイムの祭壇画》
 
ドイツ人画家グリューネヴァルトの大作《イーゼンハイムの祭壇画》をご紹介します。
 
西洋宗教芸術の傑作のひとつとされる本作は、もとはイーゼンハイムの聖アントニウス修道院にありました。同修道院は、中世ヨーロッパで流行した「アントニウスの火」と呼ばれた疫病の施療院として有名で、疫病に悩む人々にとって救済の地でした。この祭壇画は、病の苦痛と死の恐怖から患者の魂を救い、奇跡の治癒を祈願するという切実な目的を持って制作されたもので、体中から血を流して苦悶の表情を浮かべる《キリストの磔刑》に、患者たちは自らの苦しみをなぞらえて耐え忍び、勇気を与えられたと伝えられています。
 
この祭壇画は形状にも大きな特色があります。木彫群像を囲んだ展開式多翼祭壇画と呼ばれる形式で、祭壇自体が小さなゴシック的教会堂のおもむきを持つ高さ8メートルにもなる構造体なのです。かつて、平日は祭壇が閉じた状態で《キリストの磔刑》を見ることができ、日曜日には観音開きの大きな扉が開いて第二面《受胎告知》《キリストの降誕》《キリストの復活》を、さらに特別な日には第三面と木彫を見ることができるようになっていました。一度に全場面を見ることのできなかった祭壇画ですが、現在は解体され、表裏の画面を一堂に眺められる形で現地も展示されています。
 
全十場面の中で、現在当館で開催中のイベント「あやしい絵 名画の怪」(2017年11月30日まで)で “怪画”として取り上げているのが、第三面にある《聖アントニウスの誘惑》です。多くの画家が挑戦したというルネサンス期の人気テーマで、中でもグリューネヴァルトが描いた本作は名作とされています。聖アントニウスに襲い掛かる怪物たちは、目に見えない病魔で、患者が不治の病と闘い、生きる気力を奮い立たせる役割を果たしたのですが、この怪物たち、恐ろしいがどこかユーモラス・・・。こんな怪物たちがすでに16世紀に誕生していたのかと、画家の奇想天外な発想にも驚く一枚です。
 
(文責:富澤 京子 2017年9月)
 
 
 
グリューネヴァルト、マティアス《イーゼンハイムの祭壇画》
《イーゼンハイムの祭壇画》第一面
グリューネバルト、マティアス(1470/80頃-1528)
ウンターリンデン美術館、コルマール、フランス
油彩、板/第一面:380×493㎝、第二面:269×142㎝(左)、265×305㎝(中)、269×143㎝(右)、第三面:各265×139㎝ 
1515年完成
※写真は大塚国際美術館の展示作品を撮影したものです
 
 
グリューネヴァルト、マティアス《イーゼンハイムの祭壇画》
《イーゼンハイムの祭壇画》第三面
※写真は大塚国際美術館の展示作品を撮影したものです
 
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