おすすめの今月の1枚

   
大塚国際美術館スタッフが毎月おすすめの作品をご紹介。
絵画鑑賞をもっと身近に興味深く楽しんでいただけたら嬉しいです。
 

【今月の1枚】マザッチョ《貢の銭》

【今月の1枚】マザッチョ《貢の銭》
 
マザッチョは15世紀初頭の初期ルネサンスを代表する画家です。当時流行していた様式美を強調する表現ではなく、奥行きや立体感などを駆使した、リアリティ溢れる表現を行いました。
 
「貢の銭」は、新約聖書の1シーンです。この場面が絵画として描かれることは稀ですが、礼拝堂を立てたブランカッチ氏が、当時フィレンツェ市民に課せられていた新しい税制に賛成であるという政治的立場を表すため、礼拝堂内にこのシーンを描くよう依頼したとされています。
 
1枚の作品に、大きく分けて3つのシーンが描かれており、絵巻物のようにストーリーを追って観ることができます。
まず画面中央ではキリストと弟子たちが神殿に税金を納めるように命じられています。キリストは無駄な争いを避けるため、弟子ペテロに川の魚の口の中から銀貨を取り、それで支払うように命じます。ペテロは戸惑いの表情を浮かべているようにも見えますが、画面の左側では師の言葉通り、川で捕まえた魚の口から銀貨を取り出しています。最後のシーンは画面右側、ペテロが収税吏に銀貨を渡しています。
 
マザッチョが追及したリアリティを感じていただくには、作中の影にもぜひご注目ください。この作品は礼拝堂の壁に描かれたフレスコ画で、作品が描かれた壁の右側には窓があります。実際の窓からの光に絵画の登場人物たちも照らされているかのように、光はすべて右側から当たり、人物や建物の影が左側へ落ちるように描かれています。
15世紀のリアリズム表現にもご注目ください。
 
                                      (文責:畑中 真弓 2019年3月)
 
 
マザッチョ《貢の銭》
マザッチョ【1401-1428/29】
「貢の銭」
1424/25-27年
フレスコ(壁画)/254.5×598.3㎝
サンタ・マーリア・デル・カルミネ聖堂、ブランカッチ礼拝堂、フィレンツェ、イタリア
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